事実は小説よりも奇なり。実話を元にした映画は、心を揺さぶります。今回は1994年に南アフリカ共和国が舞台、国で初めての黒人大統領になったネルソン・マンデラと南アフリカのラグビー代表「スプリングボクス」の実話を元にした映画のあらすじやネタバレ情報、映画の感想を紹介していきます。
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実話映画「インビクタス 負けざる者たち」あらすじ
ネルソン・マンデラは27年間の獄中生活から釈放されて、南アフリカ共和国初の黒人の大統領に就任します。白人の官僚や職員は戸惑いながらも、マンデラと共に働くことにします。
南アフリカ共和国にはスプリングボクスという、ラグビーのナショナルチームがありました。選手は一人を除いて全て白人な上に、試合にもなかなか勝てず、黒人からはアパルトヘイトの差別的象徴として嫌われていました。
自国開催のワールドカップを控えて、黒人差別的なイメージのあるスプリングボクスというチーム名やユニフォームを変更した方がよいのでは?との意見が、黒人の間で高まります。
しかしマンデラは白人と黒人が協力して国を作るためには、白人が大切にするスプリングボクスはこのままにするべきと考え、今までのチーム名やユニフォームを全て存続させます。選手たちもマンデラの命令で黒人の住む貧困地区へラグビーの指導に行き、徐々に黒人の間でもスプリングボクスは受け入れられていきます。やがてスプリングボクスはワールドカップで快進撃を見せ、4300万人の国民が見守る中、決勝戦へと向かいます。
実話映画「インビクタス 負けざる者たち」のみどころとネタバレ情報
人種差別の印象的なシーンから物語は始まり
映画は冒頭から、柵を隔てた二つの景色を見せます。
一つは綺麗に整備された白人のグランド、もう一つは高い柵の向こうの粗末な黒人のグランドです。この景色が物語るように、当時の南アフリカ共和国は、アパルトヘイトによる厳格な黒人差別がありました。
マンデラは反アパルトヘイトの活動家として27年間、刑務所に入っていましたが、その魂は孤高で、何にも屈することなく、毅然として未来を見据えています。
大統領として初当庁した日、白人の官僚や職員の中には、荷物をまとめて出て行こうとする者もいました。しかしマンデラは執務室に職員全員を集め、「辞めるのは自由だが新しい南アフリカを作るために協力して欲しい。あなた達の協力が必要だ」と伝え、多くの白人の心を掴みます。
自身の身辺の警護にも、かつてマンデラを逮捕する側だった白人の公安と黒人のボディーガードの混成チームを作ります。最初はお互いぎくしゃくしながらも、次第に力を合わせてマンデラを警護していきます。
南アフリカ代表のラグビーチーム、スプリングボクスは、アパルトヘイトの象徴として黒人には大変不人気でした。ナショナルチームにも関わらず、試合になれば応援するのは白人ばかりで、黒人は相手チームを応援する始末です
ワールドカップを前に、マンデラはそんなスプリングボクスの主将フランソワを官邸へお茶に招きます。また、黒人と白人を一つにするために、スプリングボクスの選手たちを、黒人の住む貧困地区へラグビーの指導に向かわせます。最初はあまり気の進まない選手たちでしたが、次第に打ち解け、黒人の子供達もラグビーを一緒に楽しむようになると、徐々に雰囲気が変わっていきます。これらの活動で国際的にも注目されるようになったスプリングボクスは一丸となり、南アフリカ全ての国民が見守る中、ワールドカップを勝ち抜いていきます。
決勝戦のニュージーランド戦、グランドにはマンデラの姿がありました。新しい南アフリカの国旗が翻り、国歌が歌われた歴史的な日、スプリングボクスは粘り強く戦い、延長戦の末勝利を手にします。
国中の黒人、白人が手を携えて歓喜する中、マンデラはフランソワと握手を交わします。フランソワがマンデラに「あなたが誇れる国にして下さった」と感謝を伝えるシーンは圧巻です。
実話映画「インビクタス 負けざる者たち」感想
マンデラは27年間獄中生活を強いられたにも関わらず、白人を排除したり攻撃したりしませんでした。それどころか白人を受け入れ、共に対等な立場で歩む道を模索していきます。
映画のラスト、スプリングボクスの勝利に歓喜する人々が群がる街中で、大統領の車が立ち往生します。迂回路を提案するボディーガードに、「急ぐことはない、ゆっくり行こう」とマンデラは言います。この言葉こそ、黒人と白人が共に歩み始めた南アフリカという国を、慌てずゆっくり作っていけばいいという、マンデラの寛大で不屈の心を表した言葉だと胸が熱くなりました。
エンディングを飾る「どんな神であれ感謝する 我が負けざる魂に 私が魂の支配者、我が魂の指揮官なのだ」という詩も、長い獄中生活を経ても白人を許すことができる、偉大な指導者ネルソン・マンデラそのものだと思います。