事実は小説よりも奇なり。実話を元にした映画は、心を揺さぶります。今回は19世紀半ばの「アミスタッド号事件」の実話を元にした映画「アミスタッド」のあらすじやネタバレ情報、映画の感想を紹介していきます。

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実話映画「アミスタッド」あらすじ
19世紀半ば、アフリカで突然拉致されたシンケは、53人の仲間たちと共に奴隷船アミスタッド号に乗せられています。嵐の夜、シンケは手枷を外し、武器を強奪して仲間たちと白人の乗組員を次々と殺害して船を乗っ取ります。
シンケはルイスとモンテスの二人の白人に舵を取らせ、アフリカに行くように命じます。しかし船はアメリカへ、シンケ達は投獄されてしまいます。
裁判にかけられることになったシンケ達には、若手弁護士のロジャー・ボールドウィンがつきます。
農場の奴隷から生まれた奴隷は合法でも、アフリカから新たに奴隷を連行することは違法なアメリカで、ボールドウィンは様々な圧力にも怯まず、必死に裁判を戦います。
シンケ達が不当に連行された奴隷であるかどうかだけでなく、奴隷制度そのものの在り方を揺るがす裁判は最高裁に持ち越され、シンケ達の自由をかけた最後の戦いが始まります。
映画「アミスタッド」の見どころとネタバレ情報
ある日、突然奴隷船に連れてかれたシンケ
シンケはアフリカではライオンを倒した勇者でした。しかしある日、まるで動物を生け捕るかのように網にかけられ、ロンボコの奴隷砦へ連れて行かれます。奴隷砦には大勢の生け捕りにされた黒人が首と手足を鎖で繋がれ、沖で待つ悪名高き奴隷船テコラ号の船底に、荷物でも放り込むかのように押し込められていきます。
テコラ号の白人乗組員達は、連れてきた黒人に執拗な暴力や強姦など、暴虐の限りを尽くします。赤ん坊を抱いた女性が、自ら海に身を投げるシーンは、希望を失った未来への深い絶望を表しています。食事も粗末なものをほんの少し与え、食料が不足すると知ると、重しを付けた鎖に黒人達を繋いで、海に投げ捨て殺害します。
やがて地獄のようなテコラ号はキューバのハバナ港に到着すると、生き残ったシンケ達はアミスタッド号に乗せ換えられます。
アミスタッド号でアメリカで着いたシンケ
アミスタッド号で反乱を起こし、アメリカで投獄されたシンケ達には、裁判を戦うために弁護士のボールドウィンがつきます。一見若く頼りない風貌のボールドウィンに、シンケ達はなかなか心を開きません。しかしメンデ語を話せる通訳を探してシンケ達を助けようと必死に奔走するボールドウィンの姿に、次第に共に戦う仲間としての意識が芽生えていきます。
シンケの戦いの舞台は法廷へ
法廷でシンケが覚えたばかりの英語で、「俺たちに自由を!!」と叫ぶシーンは深く心に響きます。
裁判は、キューバの宗主国であるスペインからの圧力や、アメリカ自体が内戦に陥ることを恐れ難航し、一旦勝訴したものの、最高裁まで持ち越されます。
最後の手段として、ボールドウィンは一度協力をお願いして断られている、元大統領のジョン・クインシー・アダムズに再度力を貸して欲しいと書簡を送ります。
アダムズはシンケを自らの屋敷に招き、鎖を解いて話しをします。そして法廷で見事な諭説を披露し、シンケ達が自由であることを説きます。
シンケ達は自由になり、ロンボコの奴隷砦はイギリス軍によって陥落します。しかしシンケの村の人々や家族は、全て連れ去られ誰もいません。「人間の尊厳とは何か?どうあるべきか?」を深く考えさせられる映画です。
実話映画「アミスタッド」感想
19世紀にアフリカから奴隷として黒人が連行されていたことは知っていましたが、同じアフリカ人に生け捕りにされ、想像を絶する悲惨な環境の奴隷船に乗せられていたことに、改めて衝撃的を受けました。
その様子は正に地獄、海に身を投げて命を絶った女性の気持ちがよく分かります。
アミスタッド号はアフリカではなくルイスらの思惑でアメリカに航行しますが、この場合は逆にアメリカで良かったと思わざるを得ません。これが他の国だったのなら、同じ奇跡は無かったかもしれないからです。
映画ラストの陥落したロンボコの奴隷砦から、大勢の黒人が逃げて行く様は、「自由」を表すとても印象的なシーンです。
自由を勝ち取った後、裁判を終えた元大統領のアダムズにシンケが、「彼らに何と?」と問います。するとアダムズは「君の言葉(で勝ったの)だ」と返します。シンケの言葉とは、「祖先に助けられる」つまり、先人のお蔭で今があるということです。
「賢者は歴史から学ぶ」の言葉通り、決して忘れてはならない史実だと思います。