事実は小説よりも奇なり。実話を元にした映画は、心を揺さぶります。今回は1841年に奴隷として誘拐されたソロモン・ノーサップによる12年間の奴隷体験記の実話を元にした映画のあらすじやネタバレ情報、映画の感想を紹介していきます。
Contents
実話映画「それでも夜は明ける」あらすじ
バイオリン奏者のソロモンは、妻や子ども達と自由黒人として暮らしていました。
ある日、興行を一緒にやらないか?と二人組に誘われて三人で食事をした後、ソロモンは目が覚めると手枷足枷をつけられて、暗い部屋に放り込まれていることに気が付きます。
興行の話しは嘘で、ソロモンは逃亡したプラットという名前の奴隷として、製材所に売られてしまいます。製材所では懸命に働きますが、主人の都合と奴隷監督に殺されかけたことで、エップスの綿花農園へ転売されます。
エップスは収穫量が減ると鞭を振るう残忍な主人でした。何とか故郷の友人へ手紙を書き、助けを求めたいソロモンですが、協力者に裏切られ上手くいきません。
そんなソロモンの前に、大工のバスが現れます。奴隷制度に反対するバスはソロモンの話しを聞き、故郷の友人へ手紙を書いてくれることを約束します。
約束は本当に守られるのか、また裏切られることを心配するソロモンですが、やがて農場に保安官と故郷の友人パーカーが現れ、ソロモンは12年ぶりに家族の元へと帰っていきます。

この「それでも夜は明ける」映画のみどころネタバレ情報
自由黒人として過ごしていたソロモンに起きた悲劇
元々自由黒人のバイオリン奏者として生活していたソロモンは、仕事仲間になるはずの人間に騙され、奴隷の身に落とされてしまいます。
最初は「何かの間違いだ」と説得を試みようとするソロモンですが、奴隷と認めるまで執拗な暴力を振るわれ、血まみれになります。また、他の奴隷を庇った仲間が殺されたことから、白人の気に入らないことをすれば立ちどころに何をされるか分からないという状況を知り、表向きは従順な奴隷を演じ始めます。
奴隷生活で受ける差別的扱い
プラットという名前の奴隷として生きるソロモンを買った主人は、ソロモンを気に入って大切にします。しかしそんなソロモンを妬んだ奴隷監督に殺されかけたことで、ソロモンを守るためと自らの借金返済のために、エップスが経営する綿花農場へソロモンを売ってしまいます。ソロモンは主人に、「自分は自由黒人です。助けて下さい」と何度も訴えますが、聞いてはもらえません。
エップスは残忍な性格で、綿花の収穫量が昨日よりも下がった者は、容赦なく鞭で打つ反面、パッチーという若い女の奴隷を気に入っていて、夜になると性的虐待を加え続けています。自分よりパッチーにご執心のエップスが面白くないエップスの妻は、次第にパッチーに手を挙げるようになります。
昼間は200キロを越える綿花を積み、昼夜問わずエップス夫妻に虐待される日々に、やがてパッチーは自ら命を絶つことを考えるようになります。ソロモンに「殺して欲しい」とお願いしますが、決して自由になることを諦めないソロモンは応じません。
ソロモンは白人で奴隷監督から奴隷になったというアームズビーを信用して、こっそり故郷の友人パーカーに宛てた手紙を出して欲しいとお願いします。
しかし手紙を渡す前にアームズビーに裏切られ、エップスに尋問されます。幸い手紙を渡していなかったことと、アームズビーがアルコール中毒であることから、アームズビーが信用されず、辛くも難を逃れます。こっそり用意した手紙を燃やすソロモンの姿は、僅かに掴みかけた自由への扉が完全に消えていく、無言の悲しみでいっぱいでした。
黒人差別に反対主義者との出会い
しかし奴隷制度反対主義者の大工バスが現れることで、物語は急展開を始めます。
バスがパーカーに連絡したことで、農場に現れた保安官とパーカーに保護され、ソロモンは12年ぶりに故郷の家族の元へ帰ります。子ども達は大人になり、娘は結婚して孫と娘婿が待っていました。
ソロモンに対する不当な拉致と人身売買は、本来なら法廷で裁かれるべき出来事ですが、黒人のソロモンは白人の裁判では証言できず、結局誰も罪に問われません。
実際のソロモンの手記を元に作られた実話だけに、人間の尊厳を守ることの本当の意味を考えずにはいられません。
実話映画「それでも夜は明ける」感想
ソロモンが拉致された経緯に怪しいところはなく、誰でもこの手口なら騙されてしまうだろう現実に、怖さを感じました。
しかも、何の証拠も確認も無く、一方的に「逃亡奴隷のプラット」にされて、売られてしまいます。一旦奴隷にされたら申し開きもできず、ただ奴隷に甘んじるしかない19世紀半ばのアメリカの現実は、まさに黒人差別が当たり前のように存在する、とても理不尽な世界です。
偶然大工のバスが現れたことで、ソロモンの状況は好転しますが、もしバスが現れなければ、と思うと本当に恐ろしいです。
映画のエンドロールで、拉致されて助かったソロモンはとても幸運な一事例であり、多くは二度と家族には会えないことも知りました。
当たり前のように尊厳と自由が守られている今が、どれほど幸運なことかを改めて実感しました。